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あぶない憲法のはなし
小森陽一さんによる「自民党憲法改正草案」解読
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映像配信ページ


2013年2月14日 収録

DVD版『あぶない憲法のはなし〜小森陽一さんによる「自民党憲法改正草案」解読』の内容を文字に起こしたものです。

元映像の配信ページ(http://www.eizoudocument.com/0128DVD005.html)
YouTubeでの配信ページ(http://youtu.be/7hlz-P4IcKA)

(メインタイトル)

あぶない憲法のはなし
小森陽一さんによる「自民党憲法改正草案」解読

(小森陽一さんの語りはじまる、画面は国会議事堂)

2012年12月16日の総選挙で自民党が圧勝しました。
小選挙区制という制度のもとで、2009年に政権交代させられてしまった選挙のときよりも219万票減らしていても、衆議院の3分の2近くを独占するということでした。

(小森陽一(九条の会事務局長)さん)

第2次安倍政権が誕生する前に、自民党は2012年4月に自民党としての憲法改正草案を出していました。

(自民党憲法改正草案 2012年4月)
 ※自民党憲法改正草案(http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf)

多くの方たちはそれが出されたということはご存じでしょうけれども、しかしその中身が一体どういうものなのか、ちらっとニュースで聞いたりあるいはどこかで情報を得たという方もいらっしゃると思いますが、しかし第1次安倍政権のときに国民投票法が付帯事項つきながら決まり、そして憲法審査会が作動しています。

(字幕)
 第1次安倍内閣
 2007年5月 国民投票法(改憲手続法)
 2007年8月 憲法審査会設置

つまり憲法を変えるための形式は全部整っている。
実際に中身をどうやるかっていうそういうところまできている。

私たちにとってはいまの日本国憲法が、とりわけ9条を持つ日本国憲法が変えられるかどうかのそういう正念場になっています。
ですから自由民主党の改正案が一体どのような危険な内容を持っているのか、そんなこと見たくも聞きたくもないという方もいらっしゃるかもしれませんが、私たちが正確に自体を把握していくことこそが、そしてその中身を多くのまわりの人たちにその危険性を訴えて、いま9条を持つ日本国憲法をしっかりと守りそして活かしていくんだ。そういう九条の会の活動を発展させるためにも、これからしばらく自民党の憲法改正案の危険な中身について、私の話を聞いてみてください。

●現行憲法はどのような理念をもって始まったのか

『あたらしい憲法のはなし』

(字幕)
 1947年5月日本国憲法公布
 『あたらしい憲法のはなし』は、中学生の社会科教科書に採用された。

(『あたらしい憲法のはなし』より)
 戦争放棄
 主権在民、民主主義、国際平和主義

(字幕)
 憲法は国家に対する国民による命令書である

(小森陽一さんの語り)

近代の立憲政治、すなわち憲法をたててそれを最高法規にしながら国家の政治を動かしていくということの基本的な考え方は、主権者である国民が国家権力に対して最高法規である憲法で縛りをかける。

現在の憲法というのは「日本国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」(現行憲法前文)とあって、まず代議制民主主義、

そして「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」(平和主義)という憲法9条の考えが前文に入って、

「ここに主権が国民に存することを宣言しこの憲法を確定する」(主権在民)というのが前文の第一文なんですね。

つまり国民が主権者であるということは、国家の命令で国民は国家のために命を捨てろと言われない。つまり戦争はしない、軍隊は持たない。

(字幕)
 平和的生存権
 国家の命令で国民は死ねと言われない

ここが国民主権の一番の思想的な問題なんですが、これがバッサリと削られているというのが、今回の(自民党草案)前文の最大の特徴です。

●自民党草案は天皇を国家元首と規定している

「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家」である(自民党草案・前文)と、国家の規定をしている。

ですから明らかに大日本帝国憲法に復帰していく、戻っていく、そういう特徴を持っていて、国民主権をいわばないがしろにするということはまず最初にうたわれる。
国家像そのものがそうなっているということです。

それと呼応するように、自民党案第1章には「天皇は日本国の元首である」。

まさに大きな戦争を推進していった天皇主権の国家を転換するということで、天皇の政治行為を現在の憲法では禁止しているわけですが、日本国の元首であるということで政治行為を認めているということになります。

ここが前文と第1章の天皇条項の一番大きな違いになるんですね。

●自民党草案は前文から平和的生存権を削除

自民党の憲法改正草案の前文からは、かつて日本が行った侵略戦争に対する反省の条文が消されてしまいました。

それとあわせて、私たちが平和的生存権と言っている非常に大事な前文の削除が行われています。

現行憲法の前文には「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」とあるわけです。

これを私たちは平和的生存権と言っています

一つは憲法9条のもとで戦争の恐怖から解放されて平和のうちに生存する。

それだけではなくて、生存するということは、健康でそして文化的な最低限度の生活をする権利が保障されていて、なおかつ、きちんと国家が責任を持たなければなりません。

これが現在の日本国憲法の第25条では、第1項と第2項との関係、第1項の権利を第2項で国家が保障する。

(字幕)
 現行憲法25条
(1)すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
(2)国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

この重要な平和的生存権の条項が、前文から削られてしまっている。

その代わりに前文に何が入ってくるかというと「日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り」と、国土を防衛する義務が前文に書かれている。

これが後でお話しする憲法9条の改悪とも深く結びついているわけです。

●自民党草案は現行憲法9条2項を削除

自民党の改正で最も重要なところは、当然のことながら憲法9条の第2項の削除です。

現行憲法の9条は残すと言って、それで平和が維持されるような説明を自民党はしていますが、これは大きな嘘だと言わざるをえません。

現行憲法の9条第1項の「国権の発動たる戦争はしない」という項目は、すでに第一次世界大戦のときのアメリカとフランスの間でまず結ばれて、そして日本の外交官である幣原喜重郎が国際連盟加盟国に批准を求めていったパリ不戦条約(1928年)で、国権の発動たる戦争はすでに禁じられました。

ですから日本が戦争をしていても満州事変だと言って、ことが変わっただけだと言いつのったのは、国権の発動たる戦争はしてはいけなかったからです。

そして5000万人以上の犠牲者を出した第二次世界大戦が終わった後、国連憲章において、国権の発動たる戦争だけではなくて、武力による威嚇も武力の行使もしてはいけない。

ですから9条1項というのは、国際標準なんです。

日本の憲法9条の最も重要なところというのは、生命線が9条の2項です。

「第1項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」という戦力の不保持、つまり軍隊は持たないということです。

そして「国の交戦権は、これを認めない」という国の交戦権の否認です。

これまでの自民党は、結党以来「自衛隊は陸海空軍その他の戦力ではない」というふうに表明し続けてきたわけです。

だからこそまた、日米安全保障条約に基づいてアメリカ軍と一緒に集団的自衛権を行使するということも、ずっと禁じられてきたわけです。

そこをこんどの自民党改正案では、9条2項をバッサリ削ってしまう。
これが最も大きな憲法の改悪の要になります。

そして「国防軍を保持する」(自民党案新設9条の2)わけですから、自衛隊は軍事組織ではないと言っていたのを変えて明らかに軍隊である。

しかも国防軍は何ができるのかと言うと治安維持をする。

ということは、国民がたとえば集会やデモを行ったりすることに対して、それを弾圧するための治安出動も可能になります。

つまり明らかにかつての日本の軍国主義の中心であったところの軍隊を、9条を変えることによって復活させようとする。
ここに自民党の改悪案の一番重要な狙いがあるわけです。

●自民党草案は国防軍を創設

9条第2項をバッサリ削って国防軍を保持するという、ここに自民党の憲法改正草案の一番の狙いがあるわけですが、これを実現するための口実としてきたのが、実は2011年の3・11後の大きな混乱ですね。

確かに当時の菅直人政権の対応には様々な問題があったということは検証されていますが、「憲法に緊急事態をめぐる条文がないじゃないか、だったら国としてきちっと国民の安全を守ることができないではないか」というなかで憲法を変えるべきだという世論をつくろうとしてきた。

その今回の憲法改正案の要が、緊急事態を想定した条文を入れる。

そのときに人権が大きく制約されるということが特徴なんです。

自民党草案の98条(新設)がこの緊急事態をめぐるものです。

自民党草案 98条
「外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において…」

3.11以降言っていたのは地震等による大規模な自然災害にどう対応するかだったのに、一番最初に書かれているのが「外部からの武力攻撃」。

これは先ほどの9条第2項を削って国防軍を保持して、そしてその国防軍は海外まで出て行ける、ということと連動しているわけです。

さらにその国防軍が持っていた治安維持という役割が2番目で、「内乱等による社会秩序の混乱」に対しても緊急事態を政府がしくことができる。

●自民党草案は基本的人権を否定する

現行憲法11条「この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」とあるわけです。

基本的人権は、現在及び将来の国民に与えられる。

それが自民党案では「基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である」

「基本的人権は与えられる」という現行憲法に対して、基本的人権とは何かと規定しただけになっている。
ここが大きく転換しているところです。

もうひとつ大事なことは、現在の憲法13条では「すべて国民は、個人として尊重される」として、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」

「公共の福祉」という、簡単に言えば犯罪を犯さない限りという意味合いだったわけです。

にもかかわらず自民党の改正案では「公共の福祉に反しない限り」は、「公益及び公の秩序に反しない限り」となります。

「公益」公の利益です、要するに国益のことですね、国家の利益と「公の秩序」、これはまさに先ほど申しあげた国防軍の守らなければならない秩序維持に該当するわけですが、「公の秩序に反しない限り」となります。

となると、先ほどの憲法9条2項をばっさり切って国防軍を保持することと緊急事態とを重ねていただければ、国防軍が公の秩序を維持するような事態においては、国民の人権は保障されないということを憲法が明言しているということになるわけです。

ここに大きく人権をめぐる現行憲法と自民党改正案の違いがあります。

そしてもうひとつ大事なことは現行の97条ですね。
全面的に削除しているということなんです。

現行の憲法97条には次のように書かれています。

「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」

改めて憲法97条で、基本的人権が歴史的にこの憲法に持ち込まれたものなのだ。大日本帝国憲法下においては、つまり天皇が主権者であったときには一人一人の国民の基本的人権は保障されていなかった、それを人類史的な総括のなかで入れた、それが全面的に削除されている。

さらには、国家によって家族に対する規定が盛り込まれるということも見逃してはならないと思います。

とりわけ「家族は互いに助け合わなければならない」ということ。

自民党草案 24条(新設)
「家族は、社会の自然克基礎的な単位」
「家族は、互いに助け合わなければならない」

これは先ほどの、憲法25条で保障されている社会福祉や社会保障や医療について国がきちっと責任を持たなければならないはずなのに、家族において共助や自助をしろと。

ここでも国が国民の生活をきちっと支えていく義務を持つというところがはずされている。

ですから、様々なかたちで自民党の改正案は、一人一人の個人の人間の尊厳をめぐる基本的な人権に対して、これを踏みにじる内容になっているということが見えてくるわけです。

●自民党は改悪のために96条の規定を3分の2から2分の1に下げようとしている

私たちが一番注意をしなければならないのは、現行憲法の96条すなわち憲法改正の手続きをめぐる問題です。

自由民主党はそもそも、すでにつくってしまった自衛隊のために憲法9条を変えるということのために自由党と民主党が合体してできた。生まれたときからの改憲政党なんです。

そのときに国民を説得する理由として「GHQが日本を支配していたときにつくられた憲法だから、これは押しつけ憲法だ」と言って、自主憲法を制定するということを主張し続けてきました。

ですから常に前文から最後の条文まで全部を変えると、個別に一つの条文だけ変えるということは言っていなかった。

それが今回の安倍晋三政権においては、まずは96条から改正するというふうに、改憲手続きをめぐる96条をほかの改憲政党をいっしょに、すなわち維新の会もみんなの党も憲法を変えるというところでは一致していますから、すでに96条改正をめざす議員連盟もできているわけです。
こういう人たちと協力して、憲法96条をまず変えてしまおうというという動きがいま非常に明確になってきています。

現行憲法96条では「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」がなければ憲法の改正は発議できないということになっているわけですが、自民党の改憲案は「両議員のそれぞれの過半数の賛成」で変えられてしまう。

つまり特別多数だったものを単純多数にしてしまう。

でもこの考え方は、国民主権というものが何なのかということをまったく理解していない。

ということばかりではなく、近代の立憲政治、つまり憲法をつくった政治を行うことの基本的な考え方というのは、憲法というのは主権者である国民が国家権力に対して縛りをかける。国家権力が好き勝手なことをしてはいけない、そういう縛りをかける最高法規が憲法だという考え方なんです。

(字幕)
 近代の立憲政治の基本:
 憲法は主権者である国民が国家権力に対して縛りをかける

立法権と行政権と司法権という3つを分けている。
立法権というのは、法律をつくってその法律によって国民が縛られるわけですから、その法律をつくるところ、そういう権力を持っている。
行政権というのは、その法律に基づいて政治を行う権力を持っている。
立法権が国会だとすると、行政権は内閣をはじめとする様々な官庁。
そして法律に違反したものを裁くというのが司法権です。

そうすると、国会という憲法の改正を発議する国会というのは、どのように憲法を変えるのかというのは、ここでしか議論ができないわけです。
つまり憲法を変えるという議論ができる権力なんです。
その権力を縛るための3分の2条項なんです。

これを低くしろということは、権力に好き放題させろという、明らかに国民主権をつぶして国家主権を強調する論理なんです。

つまり「3分の2はハードルが高すぎてもっところころ変えようよ」というのは、あたかも国民が自らの意思で憲法を変えられるようすると見せかけながら、実はすべての権力を国会に集中してしまう。

そういう言い方なんだし、考え方なんだということを、私たちはしっかりと見抜いておかないとならないと思います。

●だれが憲法を守る義務を負っているのか

憲法を守らなければならないのは誰なのか、ということが明記してあります。

それは「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」(現行憲法99条)とあります。

これが近代立憲政治の考え方なんです。

けれども自民党の改正案では逆転して「この憲法は国民が守らなければならない」となっているのが改正102条なわけです。

「全て国民はこの憲法を尊重しなければならない」(自民党草案改正102条)

ここで明らかに国民主権から国家主権へ完全に逆転し、憲法は国家を縛る最高法規ではなくて、ほかの法律と同じように国民を縛るものになってしまっている。

しかも天皇は元首だというふうに天皇条項の第1章で宣言されている。
つまり元首ということは最も大きな権力を持っているはずの人なのに、自民党案102条では、ここ(現行憲法88条)にあった天皇と摂政は入っていないんです。

「国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員」というふうに、元首は特例で憲法を守らなくていい存在になっている。

ということは、かつての大日本帝国憲法の唯一の主権者は天皇ただ一人であるというあの体制に戻ろうとする、そういう性質を持った憲法改正案だということがはっきりと見えてくるのではないでしょうか。

●おわりに

さて自民党が出した憲法改正草案の危険な内容について、ご理解いただけたと思います。

改めて皆さんがこのビデオで、いまの危険な状況を学習していただき、そして学んだことをただちに皆さんのまわりの方たちに、皆さんの言葉で伝えていただく、これが呼びかけあい、そして呼びかけあったものたちが一緒に力を合わせて改憲の動きを押し返してきた、これが九条の活動の基本です。
一緒に一歩を踏み出していきましょう。

(エンドタイトル)

あぶない憲法のはなし
小森陽一さんによる「自民党憲法改正草案」解読

2013.4
制作:映像ドキュメント.com

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掲載2013年4月9日